2015年1月15日木曜日

命と向き合った10年間

こんにちは。ハビタット・ジャパンでユースプログラムを担当している田中です。

皆さんは年末年始、どのように過ごしましたか?今日は私のまわりで起きた年末の出来事をひとつ紹介させてください。

私はホームレス生活をしている方々の生活支援を学生時代から個人的に行っています。東京都の郊外に実家があるのですが、実家周辺は都心とは違い、支援団体による炊き出しなどがほとんどありません。ある人との出会いから、近隣の生きる事も大変な人々の存在に気づいた事が、私が野宿生活者への支援活動を始めたきっかけでした。

活動を始めるにあたって、野宿をしている人はどんな人なのかを知ろうと、近所の河川敷のブルーシートで出来たテントを、大学の友達と訪問したことがハセさん(仮名)との出会いでした。ハセさんはとても知的な人で、とくに政治に関心があり、会うたびに、今の日本はこうなるべきだと意見を語ってくれました。ラジオでニュースを聞く事や本を読むことが大好きで、いつも読み終わった本を差し入れに行っていました。時には食べ物よりも本を優先するような人でした。

人を傷つける事にとても敏感な人で、10年間の付き合いの中で、ハセさんと話していて一度も嫌な思いをしたことはありません。

10年間、本当にいろいろな出来事がありました。命と向き合った10年間でした。

一度だけハセさんから電話がかかってきた事がありました。台風で川が氾濫し、すべてを流されてしまったので助けてほしいという電話でした。

生活保護を申請したらどうかと何度も提案しましたが、アパートには住みたいけれど、施設に入るのも嫌だし、役所との関係や、家族に連絡が行ってしまうことも嫌だからと、断り続けていました。

今考えると、あの時にもう少し強く説得していればと後悔しています。

多い時は毎週通ってイロイロ教えてもらっていましたが、私が結婚して横浜に暮らすようになってから訪問するのが月一回になり、そして隔月になり、少しずつ行ける頻度が減ってしまいました。

そして、201412月、年末の挨拶をしに、2ヶ月ぶりくらいに河川敷に訪れると、ハセさんは亡くなっていました。いつもいる場所で工事が行われていた為、屋根のない場所に移動していたテントから、ハセさんの裸足の足だけが出ていていました。後から警察の方に、死後1ヶ月以上経っていたと教えてもらいました。衰弱死の可能性が高いようです。

最後にハセさんに会ったとき、私は妻とまだ1歳になったばかりの娘を連れて行きました。遠慮しているようで私の娘を撫でたり、抱っこしたりはしませんでしたが、少し離れたところから優しくあやしてくれました。
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今年に入って、政府は生活保護のうち家賃に充てられる「住宅扶助」について来年度から引き下げ、2017年度には今年度と比べ約190億円減額すると発表しました。また、東北被災地においては、現在も避難生活中の方が24万人もいます。

今月の17日に震災から20年を迎える阪神淡路大震災の被災者の方々も、未だ多く人が災害復興住宅に暮らし、住まいを失った事で人との繋がりも失ってしまった1人暮らしの入居者が、誰にもみとられずに亡くなった「独居死」が、昨年2014年の1年間で40人だったことが先日報道されました。

衣食住という言葉がありますが、住まいの問題、そして住まいの重要性はもっともっと日本社会の中で認知されていく必要があると思います。ハセさんにしても、きちんとした住まいがあれば年末の総選挙にも行きたかっただろうし、もしかしたら仕事の面接にも行ったかもしれない。少なくとも、真冬の寒空の下で、裸足で亡くなる事はなかったと思います。住まいは、食べ物や衣類と一緒で誰もが最低限のものは保障されるべきものだと私は思っています。

そしてもう少し視野を広げてみると、世界には16億人の貧しい住環境に暮らす人々がいて、そのうち約半数は私達が暮らすアジアの人々だと言われています。ここで言う貧しい住環境というのは、私達が想像するよりずっと貧しく、ひどいものです。きちんとした住まいは天候や自然災害、感染症、犯罪、害虫などから人を守り、休息、安心、安全、そして人との繋がりを与えてくれます。

新年を迎え、今年も、世界で一人でも多くの人が暖かな家で年末を迎えられると良いなと思います。是非みなさんと一緒に、住まいとコミュニティの大切さを社会に訴えかけていきたいと思いますので、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

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